茶番狂言は「隠し芸大会」のようなもので、芸自慢の旦那衆・暇人達が短い劇でセンスを競う集まりです。
この「茶番狂言 初子まち」は文化十三年 (1816年) 子年正月に行われた茶番狂言の中から秀作を紹介すると言う形になっています。
作者は東海道中膝栗毛で有名な十返舎一九 画は歌川国丸です。
文化一三年は文化文政と言われた江戸時代最後のバブル全盛期で、、江戸は平和を謳歌していました。
この合巻も表紙は多色刷りです。天保改革以降は無地か単色になります。
茶番狂言初子まち題目は
 ◎忠臣蔵 三段目・・・歌舞伎パロディ
 ◎仁王   ・・・・ 口上茶番
 ◎蚊    ・・・・ 酔った蚊が人と喧嘩
 ◎いかのぼり・・・・ 密書を運ぶ奴が・・
 ◎王子   ・・・・ 隠れ面を授かり・・
 ◎女郎買い ・・・・ お国侍と遊女の別れ



忠臣蔵 三段目
茶番狂言と言う位ですから、芝居ネタが必ずあります。これは忠臣蔵の三段目のパロディ。
高師直が塩谷判官に絡み挑発する場面ですが、先ず塩谷判官がアワビの貝を持って登場します。 アワビの貝殻は江戸時代では、猫の餌の皿です。
セリフは全く忠臣蔵の通りで、演ずる旦那方は十分に芸達者振りを披露した上で、突然猫のケンカの真似になり、ヤンヤの受けを取ったと思われます。
 しゃぎり は芝居の一幕の終りに演奏される笛太鼓のお囃(はやし)です



口上茶番
これは口上茶番と言って、景物(けいぶつ)と呼ばれる品々をふところや袴の内に隠して登場し、口上を述べながら言葉に合わせたて取出して見せます。 下に景物の図解をします



酔っ払いの蚊
蚊が酒を飲んで酔っ払い、人間にからむ愉快な笑劇です。
一人者同士の将棋・蚊いぶしの火で 酒の燗をするなど、当時の生活や会話の様子が感じられる楽しい一幕です


江戸みやげホームへ


密書と追手
これも芝居ネタでしょうか? 密書を運ぶ奴(やっこ)と追う捕り方。
奴は腹が減り、芋畑の芋を取って食い、捕まりそうになったら、屁をひって逃げます。
奴凧の糸が切れて楽屋に入る振りがオチになります。



王子の狐
これは狂言ネタ。王子と言う題を与えられ、王子稲荷に祈願すると、かぶると姿の見えなく面を授かる。
かぶった時の姿が見えない振りが見せどころ。
法印は本来僧の階級ですが、ここでは山伏か祈祷師。頭を張るは頭をたたくという意味です。


遊女のうそ泣き
江戸藩邸の侍が国詰になり、遊女に別れに行く。
遊女は茶碗の水を眼に付けて泣く真似をすると、太鼓持ちが墨入り茶碗と替える。
最後は三人共顔を真っ黒にして烏の振りで引っ込む。



江戸みやげホームへ