江戸時代には、女の子も寺子屋で普通に勉強する様になり、識字率が高くなります。
下の絵(作者不明)は寺子屋の様子を画いた漫画です。教科書は生徒のレベルと将来何が必要かを考え、一人一人違ったものを使いました。
女今川は女の子が寺子屋で使う教科書で、今川状という武家男子の修身教科書に準ずると言う意味で、女の子の修身の教科書と言ったものです。
絵本節操草(えほんみさおぐさ)は鈴木春信が女今川に挿絵を添えたものです。 絵は内容を全く無視し、太平を謳歌する女性が楽しく画かれています。
ここでは絵の内容を主に説明します。鈴木春信の絵をお楽しみ下さい。       

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今川(いまがわ)になぞらえて、自(みずか)らを戒(いまし)む制詞の条々
裕福な商家の主婦の所で近所の娘が漢文の基礎を習っている所です。
姿から見てこの奥様は、武家の奥向で女祐筆などの奉公をしてから嫁入りして来たのでしょう。
娘たちもそのコースを狙っているのかも知れません。
先生が読んでいる場所を生徒は棒で指しています。生徒の理解度を確認出来る良い方法です。
一人は時計(大層高価な物です)を気にしています。



常の心かたましく 女の道明らかならざる事
ここから6ページ二23項目にわたり素直になりなさい 人の悪口・いじめはいけません 親・夫・舅・姑に尽くしなさい 使用人にはやさしく と言った心得が並びます。短い文の中で生活に必要な文字が覚えられるよう工夫されています


大事をもわきまえなく打とけ 人に語る事
この絵の綿摘みとは、今は見られない女性の仕事で、真綿(繭のくず)を引伸ばして、綿入れに入れる綿を作ります。
左では子供が猫をじゃらしています。


人の中言(中傷)を企て 人の愁いをもって身を楽しむ事
噂話か恋の相談か




鈴木春信の代表作のひとつ「縁先物語」。
前ページは娘二人のひそひそ話ですが、こちらは娘の付き人が、娘の恋心を若者に打ち明け、それを娘がのぞいているシーンです。
春信の絵では若い男女は同じ顔付で、頭に櫛をしているのが娘・まげを縛っているのが男です。



正直にして衰えたる人を軽しむる事
夏、隅田川に屋根船を浮かべての納涼は、あこがれの贅沢です。
それを目がけて菓子・果物等の物売りや、歌・三味線の門付船が回ります



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継子を疎かにして 他人の嘲りを耻ざる事
母と姉妹が絵本を楽しんでいるように見えます。
奥の一人は帯の結び目が前なので、既婚者か年長者です。


出家沙門に対面すると言うとも 側近く 馴るる事
春信は母と子供の触れ合いの絵をたくさん残しています。
子供たちが折り紙を母親に見せているところです。


右の条々 常に心にかけらるべき事
ここからは、教養ある女性としての心得です。


陰は陽に従う事
春信には珍しい農村の労働の写実的スケッチです。

調布の玉川
春信の手にかかると、普通は労働もこのような世界になります。
歌は 調布の玉川  藤原定家
   たつくりや さらす垣根の 朝露に つらぬきとめぬ 玉川の里                    武蔵野



かりそめにも みだりがわしく 賎しき友に近寄るべからず
寺子屋には男女共学も別学もあり、ここは女子だけの様です。
右の子は入学したてと見え、先生が手を添えていろはを書いています。
左の二人はそれを好い事に、あやとりをして遊んでいます。

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家を乱す女は かたましく 気随なる事を好むと言えば
  かたましとは心がねじれて居ると言う意味です。
右は女髪結いで、娘が合わせ鏡で仕上がりを見ています。
   

或は善人となり 或は悪人とかわる事 みな幼き時よりの習いに依る也
夏の親子図です。縁側が描かれている絵が多いのは 日本家屋が夏の蒸し暑さを避けるのに適した造りだったからでしょう。   

かたましく よこしまに成り行く事 誠に口惜しき次第なり
洗い髪の女性は浮世絵の主要テーマの一つです



髪洗い二美人
菖蒲で初夏の爽やかさを感じさせています

夫の心穏やかならば 我が行い 良しと思うべし
帯の結びが前で、袖が短くなっているので既婚者です。
新婚さんでしょうか

忙しく 短慮ならば 我が心 正しからざると知るべし
母娘が召使いを連れて、郊外を散策出来る時代になっていました

女今川
実際の女今川は 下右のような形で、子供用の教科書のため 全て振り仮名がついています。 上の丸中には 女今川は 著者不明だが 今川了俊が息子あてに文武を勧めるために書いた 今川状 の形に習い 女児教訓書としたものであると言う意味のことが書かれています。
左は今川状の一例です。女今川が形式を踏襲していることが判ります

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