歌川広重の絵本江戸土産四編を入手しました。ボロボロになったものを丁寧に裏打ちして再生させた貴重な品です。
縦19㎝ 横12㎝ 中版の色彩本です。全ページ紹介します。
本を開いたところが下で、
右に絵本江戸土産四編 廣重筆 金幸堂 と書かれ、左ページから序文が書かれています。 両岸萬花 小金井堤
上の図は下の図にある橋から見た景色です。
多摩川は この地方第一の名河です。流れはいくつも有り 大雨が降ると渡し場まで変わってしまいます。
四ツ谷大木戸 内藤新宿(ないとうしんじゅく）
四谷大木戸は今の新宿御苑あたりにありました。
多摩川上水と並ぶ井の頭上水の流れる三鷹の風景。ここは蛍狩りの名所で 都下の通人・遊興の人たちの夏の遊び場として名高い。
高田馬場
山吹の里 姿見橋
山吹の里は太田道灌が歌道に志すきっかけになった山吹の故事によって名付けられたということです。 雑司ヶ谷 鬼子母神 法明寺
鬼子母神は 幼児を守る力が有名で、乳の出ない母親などが多く祈り 霊験あらたかだそうです。
大塚護国寺 音羽町
大塚の護国寺は 真言宗の大本山で、境内には 西国三十三か所札所参りと同じご利益のある写し所があります。
板橋駅 巣鴨庚申塚
川口の渡 善光寺
川口の渡の北に 善光寺が有ります。むかし定尊という僧が霊夢を見て発心して 資金を勧請して阿弥陀仏と脇士を鋳造したと伝えられています。
王子 稲荷社
むかしは これを岸稲荷といいました 祭神は 宇迦之御魂神(うかのみたまのかみ)です
霊験あらたかで 参詣人が絶えません
王子 滝の川
この辺の景色は 絶景で他に比べられません。 それで 都下の遊び人たちが 春夏秋冬とも群集します。
王子滝 岩屋の弁天 十条の里 女滝 男滝
不動の滝 湯滝
音無川の堰
王子料理屋 川辺の宴席
この辺の料理屋は、川辺にしゃれた部屋を作り 遊覧客をもてなします。
飛鳥山花見
現在でも有名な飛鳥山の花見風景です。この辺りは芝生の丘で、江戸中期数百本の桜が植えられ、 この所 地形高くして三河嶋の耕地を 観下し 冨士及び諸々の山々さながら 掌中に在が如し 眺望春時のみにあらず
道灌山(どうかんやま）
日暮里(ひぐらしの里）諏訪の臺
一年中景色がよいが 春はことさら 賑わい
同所 寺院庭中雪の景
元来(もとより）寺院林泉の風景 尋常(よのつね）にあらざるを、
古今集
けぬがうへに またもふりしけ 春霞
同初 宗林寺
これが最後の開きです。左のページは 別の本の広告です ここまでお読みいただき 有難うございました。最後に、序文を添付しておきます
序文は最後に紹介します。
序文が、次へ続きます。左ページに 小金の桜 と書かれています。ここから江戸名所です
。
四編は現在でも有名な小金井市の桜から、飛鳥山公園 道灌山（日暮里）など
江戸人の遊び場所になっていた 当時の田舎の風景が描かれています
下にある文章を読んでみてください。
多摩川
北西には甲斐（山梨）の山々望め、東南には堤防が連なり、
春夏秋冬 四季いずれも美しい。
鮎が名物で、昔から言われる日本六玉川の一つです。
甲州街道から江戸に侵入する敵を防ぐための木戸ですが、早くから木戸は無くなって、石垣だけになっていました。
内藤新宿は甲州街道の最初の宿場で、この街道を出入りする旅客の歓送迎をする立派な旅館・料理屋が並び、
東海道の第一の宿場 品川に劣らないほどだと書かれています。
姿見はここの水の流れが静かで、いつも水面に橋を渡る人の姿が映るので こう呼ばれる様になりました。
毎年十月 日蓮上人の御会式の時、特に賑わいます。
なかでも 水辺なので春夏がもっとも賑わいます。
川水は透明で 川底の砂、泳ぐ小魚まで見下ろせます。
実に 宴席の冠と言うべきです。
貴賤男女の花見の名所として 今でも賑わっています。
夏藤・秋草・冬雪のおりおりに従いてその景あり むかし豊嶋左衛門尉 飛鳥の神社を祀りてより この岳の名となれりとぞ
音曲の師なども門人を引連れ 憩ひて弁当をひらく 実に遊楽の地と言うべし
冬枯れに及びし雪の景色 あたかも仙境にいる思いをなせり。
これも一の奇観といふべし。
たちなば みゆき まれにこそ 見め
テンシとカナにしているのは、店舗の事ですが、近い漢字が見当たりませんでした。
庚戌とあるので、嘉永三年（1850年）広重54才頃の筆と思われます。
